『ざつ旅』レビュー|SNS時代の“ざっくり旅”が教えてくれる、偶然と出会いの価値

コメディ/日常

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※本記事の画像・引用は作品紹介のために使用しています。著作権は著作者・出版社に帰属します。

この記事の目的

本記事では、石坂ケンタの漫画『ざつ旅』をレビューしつつ、「現代の旅のあり方」というテーマについて考察します。
ネタバレは避けつつ、旅×SNSの関係や、情報社会における“偶然の価値”を掘り下げていきます。

基本情報

作品名:ざつ旅
作者:石坂ケンタ
出版社:KADOKAWA
掲載紙:電撃マオウ
出典:『ざつ旅』公式サイト(KADOKAWA 電撃マオウ)
https://dengekimaoh.jp/
ジャンル:日常
巻数:13巻(2025/10 現在)

はじめに

『ざつ旅』は、SNS時代の旅と人とのつながりをテーマにした日常系漫画です。情報社会における“旅のリアル”を軽やかに描きます。

日本を旅する女性画像

「なんとなくどこかに行きたくなったな~」
ふと読者のみなさんも、どこかにぶらり旅に行きたくなることがあるのではないでしょうか?
そんなぶらり旅をざっくり、雑にやってしまうのがこのマンガ。
タイトルにある「ざつ旅」とは、「雑な旅」の略であり、緻密な計画を立てるのではなく、ふとした思いつきや読者からの提案をきっかけに旅に出る主人公のスタイルを表しています。
ジャンルは「旅・日常・コミカル」。日本各地を舞台に、観光地からご当地グルメ、ちょっとした日常の風景まで幅広く描かれるのが特徴です。

単なる旅行漫画にとどまらず、「旅することそのものの楽しさ」や「行き当たりばったりの魅力」を味わえる作品として注目されています。

喜びネコ
喜びネコ

どこか旅に出たいな~漠然と思うことあるよね
色んな所で楽しい出会いが待っている


あらすじ

物語の主人公は、新人漫画家の 鈴ヶ森ちか
ある日、SNSで「次にどこに行ったらいい?」とフォロワーに尋ねたことをきっかけに、彼女の「ざつ旅」が始まります。寄せられたコメントやアンケートの結果に従って旅先を決めるというユニークなスタイルで、彼女は各地を巡ることに。

温泉地、自然豊かな地方都市、観光名所、さらにはマニアックなローカルエリアまで、読者参加型で進む旅が描かれていきます。
物語は基本的に一話完結型。旅先での出会い、食事、失敗談などがユーモラスに描かれ、読者も一緒に旅をしているような気分になれるのが魅力です。


キャラクターの魅力

鈴ヶ森ちか

・主人公にして漫画家。フリーランスとして活動しており、締切と向き合いながら旅に出る。
・明るくポジティブで行動力がある反面、ちょっと抜けている部分も多い。
・「ゆるさ」と「前向きさ」が読者に安心感を与え、彼女の行動力が物語全体を引っ張る。

各地で出会う人々

・温泉宿の女将、観光案内所の人、地元で暮らすおばあちゃん、たまたま居合わせた旅行者など。
・登場する人物は基本的に一話限りだが、地元ならではの温かさを感じられる存在感を持つ。

SNSのフォロワー

・直接登場するわけではないが、ちかの旅を方向づける重要な役割を果たす。
・「どこへ行けばいい?」という問いに返ってくるコメントや投票結果が旅の流れを作り、作品をユニークにしている。

お出かけネコ
お出かけネコ

SNSで行き先決めるのってユニークで面白いね
ランダムな要素がある方がワクワクする

現代社会における旅の意義

海沿いを旅する女性画像

情報社会ではSNSを開くと旅が“検索”で完結してしまいがちだが、主人公はあえて現地に行くことで「実際の体験との差」を味わっている。
例えば、「宿が満室」「鉄道がやってない時期がある」「情報と違う場所に来てしまう」など不便で失敗があるが、旅が終われば苦労したことも全ていい思い出になる。自分の知らない世界に体丸ごと飛び込んで体験できるのだ。スマホを開いて目や耳だけでは感じることのできない体験を得ることができる。


『ざつ旅』は、“デジタルの時代における旅の再定義”を描いた作品である。SNSや情報が溢れる現代において、旅の本質は「効率」ではなく「偶然」であり、「便利さの外側」にこそ人との出会いと感動がある。非効率の価値はこの作品から読み取れるだろう。


絵柄と雰囲気

石坂ケンタの絵柄は、シンプルながらも温かみがあるのが特徴です。細かすぎず、親しみやすいタッチで、旅漫画にぴったりな柔らかさを持っています。

特に風景描写は秀逸で、観光地の看板や街並み、自然の美しさをリアルに、かつ漫画的な温かさをもって表現しています。
また、ちかの表情の豊かさも大きな魅力で、驚き、感動、笑い、時に困惑する姿が読者に共感を呼びます。


印象に残ったシーン

寺を見渡す女性画像
  1. SNSで行き先を決定する瞬間
    →「本当にそんな適当でいいの?」と思いつつも、旅が面白い方向へ転がっていくワクワク感がある。北、南、東、西のようにざっくりしてるが、楽しみながら読み進めることができる。自分ひとりで決めたない現代の新しい選択の仕方。
  2. 宿探しに失敗するエピソード
    →雑な旅ならではのハプニング。リアルな「旅あるある」で読者の共感を得やすい。鉄道がやっている期間を間違えたり、すんなりと宿が取れなかったり、ざつ旅の醍醐味かもしれません。
  3. 小さな風景の発見
    →派手な観光地だけでなく、寺の階段を上り切った後ろは森しかなかったり、なんとなく電車から見た景色がいい景色だったり。小さな風景の切り取りは心に残るものがありますね。

こんな人におすすめ

・旅や旅行漫画が好きな人
・観光地よりも「日常にある非日常」を楽しみたい人
・SNSや人とのつながりをきっかけに何かを始めてみたい人
・気軽に読めるコミカルな漫画を探している人
・計画を立てるより、行き当たりばったりの旅行が好きな人


類似作品

・『ゆるキャン△』(あfろ)
 →日常系アウトドア漫画。女子高生がキャンプを通じて成長していく姿が「ざつ旅」と共通する。

・『放浪息子』(志村貴子)
 →ジャンルは違うが、旅や移動を通じて人間関係や感情を描く点が近い。

・『サ道』(タナカカツキ)
 →旅先ではなくサウナを巡る作品だが、スポット紹介+主人公のゆるい感覚が似ている。

幸せネコ
幸せネコ

色んな体験を経て人は成長するんだね
非効率や不便さに価値が出ることもあるんだ


Q&A

Q:実際に描かれる場所は本当に存在するの?
A:はい。作中に出てくる観光地や食べ物は、実際に存在するものが多いです。モデルとなった場所を訪れる読者も多く、聖地巡礼的な楽しみ方も可能です。

Q:旅漫画って飽きない?
A:『ざつ旅』は毎回違う場所や体験が描かれるため、マンネリしにくいです。さらにSNSを介した参加型要素があることで新鮮味が続きます。

Q:シリアスな要素はある?
A:基本的には明るくコミカルですが、旅先での人との出会いや人生観に触れるシーンもあり、ほんのり切なさや考えさせられる瞬間もあります。


まとめ

『ざつ旅』は、タイトルの通り「雑に始まる旅」から得られる小さな感動や楽しみを描いた漫画です。
予定調和ではなく偶然性に委ねるからこそ生まれる出会いや体験が、作品の最大の魅力。読んでいると「自分もふらっと旅に出たい」と思わせてくれる力があります。

絵柄も読みやすく、観光ガイドとしても楽しめるので、旅好きはもちろん、日常にちょっとした刺激を求めている人にもおすすめです。

みんなで旅するネコ
みんなで旅するネコ

一人で旅するのもよし
皆で旅するもよし
旅したくなるようなマンガだね。続きはこの下のリンクからチェックしてみてね


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作者の他作品

石坂ケンタは他にも読み切り作品や短編漫画を発表しており、日常の中にある非日常や温かい人間模様を描くことを得意としています。旅をテーマにした漫画は数多くありますが、『ざつ旅』は“偶然”こそが旅の本質だと教えてくれます。読後は、週末にふらっと出かけたくなる——そんな小さな行動を後押ししてくれる一冊です。
『ざつ旅』を気に入った方は、作者の他作品もぜひチェックしてみると良いでしょう。

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