ブルーピリオド レビュー・解説記事

ドラマ/ヒューマン

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基本情報

『ブルーピリオド』は山口つばさによる美術をテーマにした青春漫画で、2017年から「月刊アフタヌーン」(講談社)にて連載が開始されました。現在も続いており、単行本は累計数百万部を突破している人気作です。2020年には「マンガ大賞」を受賞し、アニメ化も果たしました。美大受験という比較的ニッチな題材を真正面から描いたことで、多くの読者に新鮮な感動を与えた作品です。

物語の主軸は、主人公・矢口八虎が自分の進路や生き方を模索する過程で「美術」という世界に足を踏み入れ、仲間たちと切磋琢磨しながら成長していく姿です。

「「好きなことは趣味でいい」これは大人の発想だと思います」
↑本作からの引用。この言葉、主人公に刺さってました。私にも刺さってました。
何か自分にとって好きなことを見つけた人、くすぶっている人。心のどこかで一歩目が踏み出せない人がこの作品をみたら背中を押されるかもしれませんね。


あらすじ

矢口八虎は成績優秀で要領も良く、周囲から「いい子」と見られている男子高校生。しかし、心の奥底では空虚感を抱えており、「自分の本当の気持ち」を表現できずにいました。そんな八虎が偶然、美術室で見た一枚の絵に心を揺さぶられます。それをきっかけに彼は「絵を描く」という行為にのめり込み、美術の道を志すようになります。

しかし、美術大学への進学は容易ではありません。周囲からの理解のなさ、専門的な技術の不足、そして強力なライバルたち。中でも「東京藝術大学」を目指すことは極めて高い壁でした。八虎は葛藤や挫折を繰り返しながらも、自分の感情をキャンバスにぶつけていきます。


キャラクターの魅力

『ブルーピリオド』の魅力は、何よりもキャラクターの人間臭さにあります。

  • 矢口八虎
     主人公。周囲に合わせて生きてきたが、美術を通して「自分の心の声」と向き合うようになる。彼の変化と成長は多くの読者に共感を与える。
  • 森まる子
     八虎の同級生。オタク的な性格で、自分の世界を強く持っている。八虎に対して良き相談相手となる存在。
  • 世田介
     同じく美術を志すライバル。圧倒的な実力を誇りながらも、人間関係に不器用な一面がある。八虎と対比される存在として物語を盛り上げる。
  • 橋田悠
     おおらかで人懐っこい性格。美術の道を楽しむ姿は、八虎に大きな影響を与える。

キャラクターそれぞれが「芸術」という不確かなものに挑む姿を描かれており、読者もまた「自分はどう生きるか」を考えさせられるのです。


絵柄と雰囲気

山口つばさの絵柄は、決して派手ではありません。しかし人物の表情や感情の揺れを丁寧に描写することで、リアルな緊張感を読者に伝えます。特に「絵画そのものの表現」に力を入れており、劇中の作品は多様な画風で描かれ、まるで別の作家が描いているようなリアリティがあります。

雰囲気は青春群像劇でありながら、単なる「部活もの」にはとどまりません。受験の重圧、社会の価値観との摩擦、才能への劣等感――現実の厳しさが鮮明に描かれるため、読後は爽やかさと同時に強烈な余韻を残します。


印象に残ったシーン

最も印象的なのは、八虎が初めて本気で描いた青い風景画のシーン。夜明け前の渋谷の風景をキャンバスに描き、自分の感情を色に込めることで「初めて自分の絵を描けた」と実感する瞬間。この体験が、彼の人生を大きく変える転機になります。周りからの見られ方よりも自分の気持ちを大事にした主人公の気持ちの変化も見て取れるのがいいですね。


こんな人におすすめ

  • 芸術や創作に興味がある人
  • 自分の進路に迷っている学生や若者
  • 劣等感を抱えながらも夢に挑戦したい人
  • 青春漫画を読みたいが、スポーツや恋愛以外の題材を求めている人

特に「何かを始めたいけれど、うまくいくか不安」という人には強く刺さる作品です。


類似作品

  • 『バクマン。』(漫画家を目指す物語)
  • 『ピアノの森』(音楽を通して成長する物語)
  • 『3月のライオン』(将棋と人間ドラマ)
  • 『左ききのエレン』(デザイナーをテーマにした作品)

いずれも「才能」「努力」「自分らしさ」といったテーマで共鳴します。


Q&A

Q. 美術に詳しくなくても楽しめる?
A. 全く問題ありません。作中で美術の基礎や考え方を丁寧に解説してくれるため、むしろ初心者の方が新鮮に楽しめます。

Q. 恋愛要素はある?
A. 少なめですが、青春群像劇として人間関係の機微はしっかり描かれます。

Q. アニメから入っても大丈夫?
A. はい。アニメは原作を忠実に再現しているので、その後に漫画を読むとさらに深く楽しめます。


まとめ

『ブルーピリオド』は単なる美大受験漫画ではなく、「自分はどう生きるのか」「何を表現したいのか」という普遍的な問いを投げかける作品です。美術に触れたことがない人でも、八虎の葛藤や成長を通して共感し、自分自身を振り返るきっかけになるでしょう。

人生の分岐点で迷っている人や、新しい挑戦を始めたい人にとって、本作は強いエールとなります。


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作者の他作品

山口つばさ先生は『ブルーピリオド』以前に『彼女と彼女の猫』のコミカライズを手掛けています。アニメ監督・新海誠とのコラボであり、こちらも人間の内面を繊細に描いた作品です。

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