基本情報
『藤本タツキ短編集 17-21』は、世界的な人気を誇る『チェンソーマン』『ファイアパンチ』『ルックバック』『さよなら絵梨』などを生み出した藤本タツキ先生が、まだ高校生から大学生という若き日に描いた読み切りを収録した短編集です。
タイトルにある「17-21」は、収録作品を執筆した当時の年齢を示しており、まさに藤本タツキの“原点”を感じられる一冊となっています。完成度の高さだけでなく、荒削りな部分からも「後の大作へ繋がる萌芽」を読み取ることができ、ファンにとっては必携の作品集です。
収録作は以下の通りです:
- 『庭には二羽ニワトリがいた』
- 『佐々木くんが弾丸を止めた』
- 『恋は盲目』
- 『シカク』
現在では紙の単行本だけでなく、電子書籍でも購入可能で、手軽に読むことができます。
あらすじ
本短編集には、4本の独立した物語が収録されています。それぞれが数十ページ程度の短編でありながら、藤本先生らしい不条理さやユーモア、衝撃的なラストが詰め込まれており、短いページ数ながら濃厚な読後感を残します。
『庭には二羽ニワトリがいた』
物騒で不条理なストーリーが展開される、藤本先生らしい実験的な作品。物語の中に散りばめられた不思議なユーモアと衝撃的な展開は、後の『ファイアパンチ』や『チェンソーマン』の方向性を予感させます。
『佐々木くんが弾丸を止めた』
友情や人間関係を描きつつ、突飛な発想が織り込まれた短編。タイトルからも分かるように、非現実的な出来事を自然に物語へ組み込む手腕が光ります。
『恋は盲目』
一見ラブコメのようでありながら、常識を覆すオチが待ち受けている作品。シュールな笑いと狂気が入り混じった展開は、藤本作品ならではの魅力が凝縮されています。
『シカク』
不思議な存在を軸にしたストーリーで、グロテスクさとユーモアの同居が印象的。視覚的なアイデアと独創的な設定が際立ち、後の作品への影響を強く感じさせます。
キャラクターの魅力
藤本タツキ短編集の登場人物たちは、必ずしも正義のヒーローではありません。
- 欠陥を抱えた人物
- 予測不能な行動を取るキャラクター
- 不条理な世界に翻弄される存在
こうした人物造形は、短い物語の中でも強烈な印象を与えます。特に『恋は盲目』のキャラクターは、普通の恋愛漫画に出てきそうな人物でありながら、結末によって全く異なる印象を残し、読者を強烈に裏切ります。
藤本先生が後に描くデンジ(チェンソーマン)やユウタ(さよなら絵梨)にも通じる、人間臭さや「弱さ」を持ったキャラクター作りは、この時点ですでに芽生えていたと言えるでしょう。
絵柄と雰囲気
『藤本タツキ短編集 17-21』の絵柄は、現在の藤本作品と比べると荒削りです。しかし、その荒さこそが作品の勢いを引き立てています。
- 線の力強さ
- コマ割りの大胆さ
- 感情表現の過剰さ
これらが融合し、短編に強いインパクトを与えています。絵としての洗練度は高くなくとも、「読み手の心を揺さぶる力」はすでに完成されており、若き日の藤本先生の才能を直に感じ取れます。
印象に残ったシーン
『恋は盲目』の衝撃的なラスト
読者の予想を大きく裏切る展開は、藤本先生が後に得意とする「物語の急転直下」をすでに確立していることを示しています。
『佐々木くんが弾丸を止めた』の友情描写
非現実的な設定でありながら、人間関係のリアルさが際立ち、短いページ数の中で濃厚な感情を描き出しています。
『庭には二羽ニワトリがいた』の不条理性
ギャグと狂気が混ざり合い、読後に「これは一体なんだったのか」と思わせる余韻が残ります。まさに藤本ワールドの原点。
こんな人におすすめ
- 『チェンソーマン』や『ルックバック』など藤本作品を深掘りしたい方
- 藤本タツキという作家の原点を知りたいファン
- 短編集やショートストーリーが好きな読者
- 荒削りでも才能の片鱗を感じる作品に触れたい方
- 漫画家を目指している人(創作の参考になる部分が多い)
類似作品
- 吾峠呼世晴短編集(『鬼滅の刃』作者による初期短編)
- 岸本斉史短編集 KARAKURI(『NARUTO』作者の若き日を収めた短編集)
- 古舘春一短編集(『ハイキュー!!』作者による読み切り集)
いずれも人気漫画家の「初期作」を知る上で興味深い一冊です。藤本タツキ短編集と読み比べると、作家ごとの成長の仕方や才能の光り方を比較できるのも面白いポイントです。

Q&A
Q1:短編集から読んでも大丈夫?
A1:もちろん大丈夫です。短編ごとに独立しているので、予備知識がなくても楽しめます。
Q2:絵が荒削りで読みづらい?
A2:確かに洗練度は低いですが、その分エネルギッシュで勢いがあります。藤本ファンならむしろ「荒さ」に価値を感じるはずです。
Q3:どこで買える?
A3:紙の単行本は書店やAmazonなどの通販サイト、電子書籍はKindleや楽天Koboなどで購入できます。特に電子版は手軽に読めるのでおすすめです。
まとめ
『藤本タツキ短編集 17-21』は、藤本タツキという漫画家の才能の原点を知ることができる一冊です。
荒削りながらも独創性と勢いに満ちており、後の代表作へと繋がるモチーフやキャラクター造形の片鱗を確認できます。
短編集として独立した読み応えがありつつ、「藤本ワールド」の形成過程を目の当たりにできる貴重な作品集。藤本作品を愛する方はもちろん、創作に興味がある方や短編好きな読者に強くおすすめします。
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