地獄楽(じごくらく)

ドラマ/ヒューマン

基本情報

  • 作品名:地獄楽
  • 作者:賀来ゆうじ
  • 連載媒体:少年ジャンプ+(集英社)
  • 連載期間:2018年1月~2021年1月
  • 巻数:全13巻完結
  • ジャンル:忍者アクション、ダークファンタジー、サバイバル

江戸時代を舞台に、不老不死の仙薬を求めて極楽浄土と称される死の島へと送り込まれた死罪人と監視役の刑吏たちが織りなす命懸けの物語。和風忍者アクションとダークファンタジーが融合した、近年のジャンプ+を代表する傑作です。


あらすじ

石田村の最強忍「画眉丸(がびまる)」は、非情な暗殺を繰り返してきたが、妻・結(ゆい)と出会ったことで人間らしい心を取り戻していく。だがその存在が里の掟に反するとして裏切られ、捕縛されて死罪を言い渡されてしまう。

通常の刑罰では死なない彼に下されたのは、幕府からの特命。――不老不死の仙薬を求め、「極楽浄土」と呼ばれる島へ渡り、それを持ち帰れば無罪放免となるという。

しかしその島は楽園ではなく、人ならざる異形と不気味な植物がはびこる“地獄”のような場所だった。死罪人たちはそれぞれの監視役である山田浅ェ門(斬首執行人)と共に上陸するが、そこに待ち受けていたのは常識を超えた恐怖と命の選別。

仲間との協力、敵対、裏切りが交錯する中、画眉丸は「生きて妻のもとへ帰る」という強い想いを胸に、地獄の島を生き抜こうとする。


キャラクターの魅力

  • 画眉丸(がびまる)
     忍として感情を殺してきたが、妻への愛情だけは消せなかった。冷徹さと人間らしい弱さを併せ持つ主人公。彼の「不死身」に近い戦闘力と、それでも人間臭い葛藤が多くの読者を惹きつけます。
  • 山田浅ェ門 佐切(やまだあさえもん さぎり)
     画眉丸の監視役となる女剣士。女性であるがゆえに周囲から差別を受けてきたが、自らの使命と信念を貫く。死を恐れず、画眉丸の心を解きほぐしていく重要人物。
  • 亜左 弔兵衛(あざ ちょうべえ)& 桐馬(きりま)兄弟
     犯罪者でありながら強い絆で結ばれた兄弟。血塗られた過去と、互いにしか理解できない信頼関係が物語に奥行きを与える。
  • ヌルガイ
     山奥で育った野生児のような存在。無垢さとしたたかさを持ち、極限の世界で生き延びる姿は読者の胸を打ちます。

敵側の天仙たちもまた魅力的で、人を超越した存在でありながら独自の倫理観と生死観を持ち、物語に緊張感を与えます。


絵柄と雰囲気

賀来ゆうじの筆致は、繊細かつダイナミック。

  • バトルシーンは爆発的な迫力と緻密な描写で、忍術や刀の軌跡までもが鮮烈に表現されています。
  • 一方で、花や植物、不気味な化物たちのデザインは幻想的かつグロテスクで、極楽と地獄が同居する不思議な美しさを演出。
  • 和のテイストを基調としつつ、現代的なセンスを取り入れた構図が読者の目を引きつけます。

全体的に重厚感がありながらも、キャラクターの表情には柔らかさや温かみも描かれており、読者が感情移入しやすい作風です。


印象に残ったシーン

  • 島に上陸した直後、楽園のような美しい花畑に心を奪われるが、次の瞬間、花が人間の体を突き破り咲き誇る――という衝撃の描写。この対比が「地獄楽」の世界観を強烈に刻み込みます。
  • 画眉丸が「生きたい」と叫び、妻への想いを吐露するシーン。冷徹な忍から一人の人間へと変わる瞬間は感動的です。
  • 佐切が女であるがゆえの差別や恐怖を抱えながらも、それを乗り越えて剣を振るう場面。己の弱さを認める強さが描かれます。

こんな人におすすめ

  • ダークファンタジーやサバイバル作品が好きな人
  • 「忍者×和風アクション」の世界観に惹かれる人
  • 強いバトルだけでなく、人間ドラマや心理描写も楽しみたい人
  • 「鬼滅の刃」や「進撃の巨人」など、シリアスと感動が同居する作品に心動かされた人

類似作品

  • 鬼滅の刃(吾峠呼世晴)
     和風剣戟アクションと家族愛の物語という点で共通。
  • 進撃の巨人(諫山創)
     人間を超えた脅威とのサバイバル、仲間との関係性が響き合う。
  • アカメが斬る!(タカヒロ・田代哲也)
     死と隣り合わせの任務、暗殺者としての宿命が重なる。
  • チェンソーマン(藤本タツキ)
     ダークで破壊的な世界観、人間臭いキャラクターたちの葛藤が近い。

Q&A

Q. 地獄楽は完結していますか?
A. はい、全13巻で完結済みです。最後までしっかり描かれているので安心して読めます。

Q. アニメ化はされていますか?
A. はい、MAPPAによってアニメ化されました。独特の世界観とアクションが高いクオリティで表現されています。

Q. グロテスクな描写はありますか?
A. あります。ただし過度な残虐描写ではなく、幻想的かつ芸術的に表現されているため苦手な人でも読みやすい部分もあります。


まとめ

『地獄楽』は「死罪人が生きるために挑む地獄のサバイバル」というシンプルな設定の中で、人間の業や愛情、恐怖や希望を描き切った作品です。

主人公・画眉丸の「生きたい」という叫びは、読者の心に強く響きます。単なる忍者アクションに留まらず、哲学的な生死観や人間の在り方に踏み込む物語は、漫画ファンなら一度は手に取るべき名作です。


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作者の他作品

  • 『烈!!!伊達先パイ』
     賀来ゆうじのデビュー作。ギャグ色が強いが、画力やテンポの良さは健在。
  • 『アヤシモン』
     地獄楽の後にジャンプで連載された作品。裏社会と妖怪を題材にした異色のバトル漫画。

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