『ルックバック』は、漫画に打ち込む二人の女子中学生・藤野と京本の出会いと成長を描くワンショット。静止画のはずのコマが“動いて見える”ほどの躍動感と、胸に刺さる感情の起伏が忘れられない一冊です。
基本情報
- タイトル:ルックバック
- 著者:藤本タツキ
- 形態:単行本(全1巻)
- ジャンル:青春/ドラマ
- 出版:集英社(ジャンプコミックス)
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あらすじ(ネタバレなし)
クラスで友人も多く、四コマ漫画が「学級新聞の名物」になっている藤野。
一方で、学校に来られず自宅に引きこもりながら藤野の四コマを楽しみにし、絵を描き続けている京本。
対照的に見える二人は、“漫画が好き”という一点でつながり、やがて出会う――。その瞬間から互いの存在が、表現への姿勢と人生を少しずつ変えていきます。
キャラクターの魅力
藤野
自信家で「クラスいち絵が上手い」と言われる女の子。学級新聞の四コマはアイデンティティそのもの。ところが、引きこもりの同級生・京本が一緒に掲載されたことで、圧倒的な画力差を目の当たりにし、ライバル心が芽生える。
素直ゆえに褒められるとすぐ行動に移す“のび”の良さがあり、悔しさも推進力に変えていけるところが魅力です。
京本
藤野の四コマをきっかけに一途なファンとなった同級生。外に出られない日々でも、家でひたすら絵に向き合う。藤野を「藤野先生」と呼ぶ姿勢には、うまく言葉にできない感情の真っ直ぐさが宿る。多くを語らないからこそ、放たれるひと言が本音の重みを持ちます。
絵柄と雰囲気
コマの“動き”が抜群。筆致の勢いとカメラワーク的な構図で、映画のような連続性を感じます。静止画の積み重ねでありながら、キャラクターの呼吸や重心移動まで見えてくる。
紙の上で時間が流れる体験ができるのが、本作の大きな魅力。
印象に残ったシーン
京本が「藤野先生」と呼び、藤野がそれを受け取る場面。
「存在を認めてもらえる」瞬間の熱量が一気に爆発し、雨の中でスキップする藤野の姿に胸を撃たれます。自己肯定感が跳ね上がる、その一歩の軽さと尊さ。藤野の動きからとてつもない喜びの大きさが表現されています。人から認められる”歓喜”の瞬間をうまくとらえていますね。
こんな人におすすめ
- 夢を追っている人:比較や挫折を糧に前へ進みたい時に。
- かつて何かに熱中したことがある人:あの頃の熱と悔しさを思い出せます。
- 大事な人がいる人:誰かのひと言が背中を押す、その力を信じたくなる。
年齢によっても少しずつ見方が変わる作品。子供の時に何かに夢中になっているときに見る場合と、大人になって何か振り返りたくなる瞬間に見るのでは違った味わいを感じることができます。
類似作品
- バクマン。:創作に向き合う姿勢や相棒関係の熱量。
- ブルーピリオド:表現と自意識の葛藤。
- 映像研には手を出すな!:発想の爆発力と“作る喜び”。
まとめ
タイトル通り、ふり返り(Look Back)が折り重なって現在の自分が形作られていく物語。
社会的テーマもさりげなく織り込みつつ、説教臭さはなく、漫画という表現を通して「大切な存在」と「進み続ける理由」に気づかせてくれる一冊です。短編だからこそ、何度でも読み返して解像度を上げたくなるタイプの作品。
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