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基本情報
- タイトル:BEASTARS(ビースターズ)
- 作者:板垣巴留(いたがき ぱる)
- 出版社:秋田書店
- 掲載誌:週刊少年チャンピオン
- 連載期間:2016年~2020年
- 巻数:全22巻完結
- ジャンル:青春群像劇、サスペンス、ラブストーリー、擬人化動物ドラマ
擬人化された動物たちが暮らす社会を舞台に、「肉食獣」と「草食獣」が共存する中での矛盾、葛藤、愛憎が描かれる。主人公は大柄で心優しいハイイロオオカミのレゴシ。彼の成長や恋愛、そして社会に潜む暴力や差別の問題が、緻密な心理描写で描かれている。

あらすじ
動物たちが人間のように暮らす世界。そこには「肉食獣」と「草食獣」の大きな溝が存在していた。
ある日、学園内で草食獣のアルパカが捕食される事件が発生。犯人は不明のまま学園に不安が広がる。そんな中、演劇部に所属するハイイロオオカミのレゴシは、ウサギのハルと出会う。小さく儚い存在でありながら、どこか大胆さを持つ彼女に惹かれる一方、肉食獣としての本能が顔を出し、恋心と捕食欲の狭間で葛藤する。
舞台は学園内に留まらず、裏市と呼ばれる肉食獣が肉を取引する闇社会、草食獣の政治的立場、そして「ビースター」と呼ばれる社会的象徴の存在へと広がっていく。友情、恋愛、差別、暴力が複雑に絡み合い、レゴシは「獣として」「個人として」どう生きるかを模索することになる。
キャラクターの魅力
- レゴシ:
ハイイロオオカミ。体格に恵まれているが心は繊細。自らの本能と優しさの間で苦しむ姿が人間臭く、共感を呼ぶ。 - ハル:
小柄なウサギ。草食獣でありながら、強い自己主張と大胆な行動力を持つ。弱者としての立場を理解しつつ、媚びない姿勢が魅力的。 - ルイ:
レゴシと同じ演劇部の花形であり、赤鹿。誇り高くリーダー気質だが、脆さや苦悩も抱える。社会の表と裏を渡り歩く彼の姿は物語を大きく動かす。 - ジャック:
レゴシの親友でラブラドール・レトリバー。明るく素直で、レゴシにとって心の支えとなる。
キャラクターたちは種族特性を背負いながらも、それぞれが「個」として悩み成長していく。その人間臭さが最大の魅力だ。
「BEASTARS」が描く3つの社会的メッセージ

『BEASTARS(ビースターズ)』は、動物の姿を借りながら現代社会の“人間”そのものを映し出した寓話です。
種族の違い=価値観・階層・本能の違いとして描かれ、そこに「共存」「差別」「自我」といった普遍的テーマが交錯します。
ここでは、物語を通して浮かび上がる3つの核心テーマを掘り下げます。
① 共存と差別 ― 「本能の壁」を越えられるか
肉食獣と草食獣が共に生きる世界は、
一見すると平和で秩序があるように見えます。
しかしその裏では、“生まれながらに定められた恐怖と偏見”が根深く存在しています。
レゴシはその矛盾の中で生きる存在。
彼は「優しい肉食獣」として理性を保とうとする一方で、
本能的な捕食欲を抑えきれずに苦しみます。
「他者を傷つけたくない」という思いは、
“人間社会で誰かを無意識に傷つけてしまう不安”の象徴でもある。
この構図は、現実社会における差別・階層・性別・文化の分断を鋭く暗示しており、
「理解し合うとは何か」を問いかけてきます。
② 愛と本能 ― 「欲望」と「やさしさ」の同居
BEASTARS最大の魅力は、恋愛が“理性と本能の狭間”に置かれていることです。
レゴシがハルに惹かれるのは、単なる恋ではなく、
「食べたい」と「愛したい」の境界を見失う危うい感情です。
これは、現代人が抱える“愛の二面性”のメタファーでもあります。
好きだから支配したい、守りたい、独占したい――
その感情の中に潜む暴力性を、板垣巴留は見事に描き出します。
「欲望を持つことは罪ではない。
それを自覚し、他者を思いやることで“人間性”が生まれる。」
BEASTARSは“本能を否定する物語”ではなく、
「本能と共にどう生きるか」を探す物語なのです。
③ アイデンティティと社会 ― “自分であること”の孤独
レゴシもルイも、どちらも「理想」と「現実」の狭間で揺れ動きます。
ルイは草食獣でありながら肉食獣の世界に踏み込み、
レゴシは肉食獣でありながら優しさを選ぶ。
この対比は、
「社会が決めた役割を越えて生きる苦しさ」を象徴しています。
自分らしく生きようとすれば浮き、
周囲に合わせれば自分を失う。
彼らの葛藤は、就職、恋愛、家族関係など、
私たちの社会生活そのものを映している。
「ビースター」とは、単なる称号ではなく、
“社会の中で自分の信念を貫いた者”への敬意。
この物語は、誰もが“自分という獣”と向き合わざるを得ない世界の寓話といえるでしょう。
絵柄と雰囲気

板垣巴留の絵柄は独特で、決して「万人受けする美麗画」ではない。しかし、その荒削りさや勢いが作品の世界観に強くマッチしている。
- 線は力強く、キャラクターの感情表現はダイナミック。
- 演劇シーンやバトルシーンでは劇画調の迫力が際立ち、心理描写では繊細なタッチに変化する。
- 背景は時に簡略化されるが、それがキャラクターの心情を浮き彫りにする効果を持つ。
全体的に「不安定さ」「緊張感」が漂う絵柄が、社会の矛盾を描くテーマとリンクしている。
印象に残ったシーン
- 初めてレゴシがハルに惹かれるシーン
捕食欲と恋心の狭間で揺れるレゴシの内面は、この作品を象徴する瞬間。 - ルイが裏社会に踏み込むシーン
草食獣であるルイが、肉食獣の世界に身を投じていく展開は衝撃的であり、彼の複雑なプライドを感じさせる。 - レゴシとルイの対峙
理想と現実、友情と対立が交錯する二人の関係は、単なる少年漫画の枠を超えた人間ドラマを見せる。 - 最終章での決断
レゴシが「どう生きるか」を選び取る姿は、彼の成長と物語の集大成として心に残る。
こんな人におすすめ
- 「青春×社会問題」の物語を楽しみたい人
- 擬人化作品や動物寓話が好きな人
- ダークな雰囲気の恋愛・友情ドラマを求める人
- 心理描写に重きを置いた作品が好きな人
類似作品
- ズートピア:同じく草食獣と肉食獣の共存をテーマにした映画。
- 動物のお医者さん:ユーモラスな動物作品だが、獣と人間の距離感を描く点で共通。
- 寄生獣:種を超えた共存や葛藤というテーマで共鳴。
- BANANA FISH:裏社会、友情、そして切ない青春の香りが共通している。
Q&A

Q:BEASTARSのタイトルの意味は?
A:「BEASTARS」は「Beast(獣)」と「Stars(星)」を合わせた造語。社会の象徴として称えられる存在を意味する。
Q:アニメ版と漫画版の違いは?
A:アニメはCGアニメーションで独特の質感を持つ。漫画版の荒々しい線と比較すると、映像はより洗練されており、それぞれの魅力がある。
Q:テーマ性は重い?
A:差別や暴力、命の重さなどシリアスなテーマが多いが、恋愛や友情の明るさもあり、バランスが取れている。
まとめ
『BEASTARS』は単なる擬人化動物漫画ではなく、人間社会を鋭く映し出す寓話である。
肉食と草食という分かりやすい対立構造を軸にしつつ、その中で生きる個々のキャラクターの苦悩と成長が丁寧に描かれる。レゴシの「獣でありながら人間臭い姿」は読者に深い共感を呼び、読む人それぞれが「自分はどう生きるか」を考えさせられる。
完結済みのため、一気読みが可能であり、漫画・アニメの両方で異なる楽しみ方ができる点も魅力だ。
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